加齢や病気、事故などが原因で、聴覚に悩みを抱える人は多い。とりわけ高齢者にとって、音の聞き取りにくさは生活のさまざまなシーンで課題となりやすい。加えて、聴力の低下そのものが孤立感や不安感の増加、さらには認知機能の低下など、心身の健康にも影響するといわれている。このような課題をサポートするために広く利用されているのが補聴器という医療機器である。しかし、初めて利用を検討する高齢者やその家族にとって、数多くの種類や特性の中から最適な一台を選ぶことは簡単とはいえない。

聴力低下への気づきは家族や周囲から指摘されて始まることも少なくない。テレビの音量が大きくなってきた、呼びかけても返事が遅くなった、電話での会話が聞き取りにくそうにしているなど、日常生活のさまざまな場面でその傾向は現れる。こうした変化が見受けられた場合、まずは正確な聴力の状態を専門の医療機関で調べることが重要だ。不適切な自己判断は、実際の生活に必要な聞こえの支援へとつながらないばかりか、補聴器の恩恵を十分に受けられない原因にもなる。医療機関では聴力測定を実施してくれるため、装用に適したタイプや必要な性能など、適切な助言を受けることが可能である。

高齢者の場合、補聴器を選ぶ段階で重視すべき点が複数存在する。最初に考えたいのは、補聴器の基本的なタイプである。大きく分けて耳の後ろに装用する耳かけタイプと、耳の中や耳穴に装用する耳穴タイプがあり、それぞれに特徴がある。耳かけタイプは装用と調整がしやすく、扱いが簡単な点がメリットだが、やや目立つ形状となる場合もある。一方、耳穴タイプは見た目が目立ちにくいが、手先が不自由な方や細かい作業が苦手な方には装着や調整がやや難しく感じられることもある。

また、耳垢の溜まりやすさや耳の形によって相性が分かれるため、実際に試用してみることが必要不可欠である。もう一つ考慮したいのは、周囲の環境や用途である。日常生活の多くを自宅で過ごす場合には、人との会話が主な目的となるが、買い物や外出先、人の多い施設など複数の環境で使用する場合はさまざまな音声信号の切り分けが求められる。現在多くの補聴器には周囲の騒音を抑え、必要な音を際立たせる機能が搭載されているが、その性能には機種による違いがあり、希望する環境にあわせて慎重に選択することが大切だ。具体的な選び方のポイントとしては、まずフィット感と操作性が挙げられる。

装用時間が長くなるほど、異物感や圧迫感は違和感につながりやすい。加齢による手指の力や感覚の衰えも考慮して、装着や取り外しが容易で、本体のボタンやダイヤルが操作しやすい品を選ぶとよい。加えて、メンテナンスの容易さも重要である。ほこりや耳垢による故障を防ぐために、日常的な清掃がしやすい構造であるかどうかも確認しておきたいポイントになる。また、自身の聴力レベルに対応した機能が備わっているかも見極めが必要だ。

例えば、左右の耳で聴こえ方が異なる場合、それぞれに異なった設定ができる機能、周囲の状況によって音量や音質を自動で調整できる機能などが求められる。さらに、電話やテレビの音が直接補聴器に届くような補助機器への対応、乾電池式と充電式のバッテリーの選択も検討ポイントとなる。補聴器選びにおいて「試聴」は欠かせない工程である。装用し始めの時期は、音の違和感や聞こえ方の変化に戸惑うことがあるが、試聴を通じて自分の生活や好みに合うものを探すことができる。必要であれば家族や専門知識を持つ方のサポートを受けながら試用するのが望ましい。

購入後も徐々に調整して慣らしていくことで、より自然な聞こえに近づけられる場合が多い。価格帯にも幅があり、高性能なモデルほど防水・防塵・騒音抑制・音声解析など多彩な機能を搭載している。一方で、機能が多いからといって必ずしもすべてが必要なわけではない。相談・試用の際には予算を含めた上で必要な機能を明確にして選ぶことが後悔しないために大切である。最後に、装用には調整期間やメンテナンスも大切になる。

購入後も定期的な点検や耳鼻科でのフォローを欠かさず、自分の聴こえに合った状態を保てるようにしたい。家族や周囲の温かな理解と協力も、使用を継続する上では心強い支えとなるだろう。補聴器は日常生活の快適さだけでなく、高齢者の社会参加やコミュニケーション意欲の回復にも寄与する。「聞こえる」ことの大切さを再認識し、納得できる選び方を心がけたいものである。高齢者を中心に加齢や病気、事故で聴覚に悩みを抱える人は少なくありません。

聴力低下は孤立感や不安感の増加、さらには認知機能の低下など心身の健康にも影響を及ぼすため、補聴器の活用が広く勧められています。しかし、初めて補聴器を選ぶ際は種類や機能が多岐にわたり、最適な一台を選ぶことは容易ではありません。まずはテレビの音量の上昇や会話の聞き取りづらさなど日常の変化に気づいたら、自己判断をせず医療機関で正確な聴力を測定し、専門的なアドバイスを受けることが重要です。補聴器選びでは耳かけ型と耳穴型のどちらが適するか、実際に試してフィット感や装着のしやすさ、操作性などを確認するとよいでしょう。加齢による手指の衰えも考慮し、扱いやすい機種を選ぶことがポイントです。

また、騒音抑制や自動音量調整、補助機器との連携機能も使用環境や聴力の特徴に合わせて慎重に見極める必要があります。価格帯や機能の多さだけでなく、必要な機能を明確にして選択することが大切です。購入前の試聴や家族の協力も有効で、装用後も定期的な調整やメンテナンスを行うことで自然な聞こえに近づきます。補聴器は生活の快適さだけでなく、高齢者の社会参加やコミュニケーションの促進にも寄与する大切な道具です。自分に合った補聴器を無理なく選び、納得できる聞こえを目指しましょう。